トップ機関誌「あきた経済」トップ第99回県内企業動向調査(平成30年9月調査)

機関誌「あきた経済」

第99回県内企業動向調査(平成30年9月調査)

 平成30年度上期(30年4月~9月)における県内企業の業況判断(実績見込)は、業績全般BSIが29年度下期(29年10月~30年3月)に比べて、9ポイント低下の▲6となった。県内企業の業況感は、サービスや観光など大幅に改善した業種があった一方で、売上や受注そのものは堅調に推移しながらも、原材料費や燃料費等の上昇を背景に、収益的には伸び悩む業種が多くみられ、全体としては悪化する結果となった。
 30年度下期(30年10月~31年3月)の業績全般BSI(見通し)は、30年度上期に比べて4ポイント上昇の▲2と水面下ながら改善する見通しとなっている。木材・木製品や運輸で需要の増加が見込まれるほか、機械金属、卸売・小売、その他製造などでも改善する見通しとなっている。
 30年度の設備投資計画額は、機械金属、運輸、建設、衣服縫製など多くの業種での増加を受けて、前年度実績比14.6%増の628億4,700万円となる見込み。
賃上げについては、30年度以降「実施した」企業が68.5%、「今後、実施予定」は17.7%となり、8割を超える企業が賃上げを実施済もしくは実施予定であることが分かった。

1 業況判断

(1)業績全般BSI
30/上(30年4月~30年9月)実績見込
 全産業の業績全般BSI(前期比「上昇」割合-「下降」割合)をみると、平成30年度上期(以下、「30/上」)の実績見込は、29年度下期(以下、「29/下」)に比べ9ポイント低下の▲6と、業況感は悪化した。
 産業別にみると、製造業では、電子部品で悪化したものの、自動車関連市場向け等の製品が堅調に推移したことなどから、プラスを維持している。機械金属では、受注は概ね堅調に推移しているものの、経費増加に伴う収益低下により悪化した。衣服縫製では、受注回復の兆しがみられ改善した。酒造では、高付加価値商品の販売が好調を維持し、改善した。木材・木製品では、住宅市場の低迷のほか、原材料コストが上昇したことなどから、大幅に悪化した。その結果、製造業全体としては13ポイント低下の▲9となった。
 非製造業では、受注環境が好調なサービスや外国人観光客が増加している観光で大幅に改善した。卸売・小売では、原価上昇や業者間の競争激化による販売価格の低下により悪化した。運輸は荷動きが増加傾向にあるものの、燃料価格高騰や人件費等のコスト増により悪化した。その結果、非製造業全体としては4ポイント低下の▲2となった。
 なお、地域別(全産業)では県南で改善したが、県北、県央で悪化した。

30/下(30年10月~31年3月)見通し
 平成30年度下期(以下、「30/下」)の全般的な業績BSIは、全産業では30/上に比べて4ポイント上昇の▲2と、改善する見通し。
 産業別にみると、製造業では、酒造で原材料費や輸送費の上昇から落ち込むものの、木材・木製品などで受注の回復により、大幅に改善が見込まれることから、全体では6ポイント上昇の▲3と改善する見通し。
 非製造業でも、全業種ともに不透明さは残るものの、運輸で荷動きの増加から大幅な改善が見込まれるなど、全体では1ポイント上昇の▲1とやや上向く見通し。
 なお、地域別(全産業)では県央、県南で改善するが、県北で悪化する見通しとなっている。

(2)売上高BSI
30/上実績見込
 30/上の売上高BSI(前年同期比「増加」割合-「減少」割合)は、全産業で29/下に比べて3ポイント上昇の3と改善した。

30/下見通し
 30/下の売上高BSIは、全産業で30/上に比べ1ポイント低下の2とやや悪化の見通し。

(3)経常利益BSI
30/上実績見込
 30/上の経常利益BSI(前年同期比「増加」割合-「減少」割合)は、全産業で29/下に比べ6ポイント低下の▲16と悪化した。

30/下見通し
 30/下の経常利益BSIは、全産業では30/上に比べて8ポイント上昇の▲8と改善する見通しである。

(4)在庫水準BSI
30/上実績見込
 30/上の在庫水準BSI(「過剰」割合-「不足」割合)は、全産業(建設・運輸・観光・サービスを除く)で7と、29/下から横這いとなった。

30/下見通し
 30/下の在庫水準BSIは、全産業で30/上と比べて3ポイント低下の4と、過剰感が緩和される見通し。

(5)資金繰りBSI
30/上実績見込
 30/上の資金繰りBSI(前期比「好転」割合-「悪化」割合)は、全産業で29/下に比べて4ポイント低下の▲4と悪化した。

30/下見通し
 30/下の資金繰りBSIは、全産業で30/上と比べて1ポイント低下の▲5と、やや悪化する見通し。

(6)雇用BSI
30/上実績見込
 30/上の雇用BSI(「過剰」割合-「不足」割合)は、全産業で▲50と29/下から横這いとなった。

30/下見通し
 30/下の雇用BSIは、全産業で30/上に比べて6ポイント上昇の▲44と、不足感がやや緩和される見通し。

2 業況の回復に効果のある施策

 30/上の業況が29/下に比べて「上昇」と回答した事業所へ、業況の回復に効果のある(または、あった)ものを、3つまでの複数回答で質問した。
 全産業では、「既存取引先からの受注増加」が74.1%と最も多く、次いで「販路の拡大」(38.9%)、「販売価格の引き上げ」(24.1%)となっている。
 製造業では、「既存取引先からの受注増加」が82.6%、「販路の拡大」が39.1%となった。また、「作業工程などの効率化・短縮化」も34.8%となり、非製造業と比較して割合が高くなった。
 非製造業では、「既存取引先からの受注増加」が67.7%と最も多く、次いで「販路の拡大」が38.7%となった。
 業種別の特徴としては、電子部品、機械金属、建設、運輸の4業種で、「既存取引先からの受注増加」とする回答が100.0%であった。

3 設備投資の動向

 回答企業254社における平成30年度の設備投資実施計画企業数は、29年度(実績)を1社上回る193社(実施計画企業割合76.0%)となった。設備投資計画額は前年度実績比14.6%増の628億4,700万円となっている。
 産業別にみると、製造業は、設備投資計画企業数が96社(実施計画企業割合82.8%)、設備投資計画額は前年度実績比14.1%増の511億4,900万円となる見通し。一方、非製造業は、設備投資計画企業数が97社(実施計画企業割合70.3%)、設備投資計画額は同16.9%増の116億9,800万円となる見込み。
 
 設備投資の主な目的(3つまでの複数回答)をみると、「既存設備の維持・更新」(88.6%)が最も多く、次いで、「合理化・省力化・効率化」(36.3%)、「生産能力の増強」(29.5%)となった。
 設備投資の主な対象(3つまでの複数回答)をみると、「生産機械・工作機械」(45.1%)が最も多かった。以下、「車両」(30.6%)、「工場(建物)」(21.2%)と続いた。

4 賃上げについて

 平成30年度以降、賃上げ(定期昇給やベースアップなど)を実施したかについて質問した。
 全産業では、68.5%が賃上げを実施した。また、「今後、実施予定」の企業も17.7%あり、合わせて86.2%の企業が賃上げを実施済もしくは実施予定であることが分かった。
 製造業では、賃上げを「実施した」企業が69.8%、「今後、実施予定」は19.0%となった。
 非製造業では「実施した」が67.4%、「今後、実施予定」は16.7%となった。
 業種別にみると、賃上げを実施した企業割合が最も高かったのは、機械金属の92.6%、次いで建設の83.8%であった。
 また、賃上げ実施の時期(予定を含む)については、全産業では「30年度上期」が最も多く79.0%を占めた。次いで「30年度下期」が10.5%、「31年度(2019年度)以降」が10.0%となった。
 製造業では、「30年度上期」が77.7%と最も多く、次いで「30年度下期」が12.6%となった。非製造業では、「30年度上期」が80.2%、「31年度(2019年度)以降」が11.2%の順となった。
 業種別の特徴をみると、賃上げを30年度上期に実施した企業割合が最も高かったのは、建設(91.2%)、次いで機械金属(88.5%)であった。また、30年度下期に実施を予定している企業割合が高かったのは、衣服縫製(62.5%)、運輸(23.5%)、31年度(2019年度)以降に実施を予定している企業割合が高かったのは、酒造および観光(各々16.7%)であった。
(打矢 亘)
あきた経済

刊行物

お問い合わせ先
〒010-8655
 秋田市山王3丁目2番1号
 秋田銀行本店内
 TEL:018-863-5561
 FAX:018-863-5580
 MAIL:info@akitakeizai.or.jp