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機関誌「あきた経済」

平成30年度新入社員アンケートから―安定志向が根強い一方で、先行き不安高まる―

 当研究所では、毎春、県内企業の新入社員を対象に、就職活動や働き方に関するアンケート調査を実施している。調査結果では、企業の採用活動の活発化を背景に、希望する職種や業種、企業へ就職できたとする回答割合が高くなった。また、その職場で定年まで働きたいとの安定志向が引き続き多数を占めるなか、女性活躍推進の気運の高まりもあり、女性の「定年派」増加が目立った。一方、不安定な社会情勢や産業構造の変化などを背景とする先行き不透明感の表れからか、「定年派」でも「転職派」でもなく「分からない」とする回答割合が前回調査から大幅に上昇した。

1 アンケート結果

Q1 効果的だった情報収集方法は何ですか(2項目複数回答)
 全体では、「先生・教授に話をきく」(39.5%)が4年連続で最も高い割合となり、次いで、「インターネット」(38.8%)と「就職部の資料」(36.4%)がともに3割台となった。
 最終学歴別にみると、中学・高校卒では「就職部の資料」(46.5%)と「先生・教授に話をきく」(45.9%)が4割を超えた。専門・短大卒では、「先生・教授に話をきく」(55.4%)が5割超となり、「ハローワーク」(26.8%)も他学歴を大きく上回った。大学・大学院卒では、「インターネット」が63.2%で、中学・高校卒(31.8%)と専門・短大卒(30.4%)の約2倍となった。

Q2 就職活動で利用した機関やイベント
 就職活動で利用した機関やイベントについて、全体では、県と秋田労働局などが主催する「秋田県合同就職説明会・面接会」(27.2%)と「ハローワーク」(26.5%)が2割を超え、「リクルート会社主催の会社説明会・面接会」は19.0%となった。公益財団法人秋田県ふるさと定住機構が運営する「あきた就職活動支援センター」は、秋田市御所野に中核となる中央センター、大館市に北部サテライト、横手市に南部サテライトを設けている就職支援施設で、利用割合は4.1%となった。
 個別機関・イベントについて、「秋田県合同就職説明会・面接会」は、大学・大学院卒(50.0%)で回答が多く集まった。本イベントは、県内企業の情報提供に加え個別相談も実施するなどサポート体制が手厚く、利便性が高かったようだ。
 「ハローワーク」の利用割合は、専門・短大卒(37.5%)と大学・大学院卒(32.4%)で3割台となり、中学・高校卒(20.6%)を10ポイント以上上回った。全国の求人情報が得られるため、利用しやすかったものと推測される。
 「リクルート会社主催の会社説明会・面接会」については、大学・大学院卒(47.1%)が専門・短大卒(23.2%)の2倍以上、中学・高校卒(6.5%)の7倍以上となったが、平成29年度に実施した前回調査(57.5%)からは10.4ポイント低下した。なお、このうち、県外就職を希望した割合は78.1%、実際に就職活動を行った割合は65.6%を占めた。
 「あきた就職活動支援センター」は、最も利用割合の高い大学・大学院卒(7.4%)でも1割に届かず、最も低い専門・短大卒では1.8%となった。

Q3 インターンシップ(職業体験)の経験はありますか
 インターンシップ経験があると回答した割合は、全体の69.0%で、前回調査(74.4%)から5.4ポイント低下し、5年ぶりに7割を下回った。最終学歴別では、中学・高校卒(78.8%)、専門・短大卒(64.3%)、大学・大学院卒(48.5%)と、学歴が上がるにつれて経験割合は低下した。
 次に、インターンシップ経験がある回答者203名に対し、その効果について質問した。何らかの効果があったとする回答割合は全体の93.6%で、中学・高校卒(94.1%)、大学・大学院卒(93.9%)、専門・短大卒(91.6%)と、いずれの学歴でも9割を超えた。
 項目別では、「企業や仕事の内容を理解できた」と回答した割合(47.8%)が4割を超え、次いで、「職業意識が向上した」(24.1%)、「自分の適性を確認できた」(18.2%)の順に割合が高くなった。「企業や仕事の内容を理解できた」は、専門・短大卒(50.0%)で5割、大学・大学院卒(48.5%)と中学・高校卒(47.0%)でも4割を超えた。
 「職業意識が向上した」は、中学・高校卒(27.6%)と専門・短大卒(22.2%)が2割台で、大学・大学院卒(12.1%)を10ポイント以上上回った。反面、「自分の適性を確認できた」は、大学・大学院卒(27.3%)が、専門・短大卒(16.7%)と中学・高校卒(16.4%)に比べて、10ポイント以上高い割合となった。
 また、インターンシップ先に就職したかどうかについて、今回初めて質問したところ、経験者全体の27.1%が就職したと回答した。専門・短大卒(30.6%)が最も高く、次いで、中学・高校卒(29.1%)、大学・大学院卒(15.2%)となった。インターンシップを通じて、企業と回答者がお互いの理解を深めたことが就職に繋がったものと考えられる。

Q4 就職に関して誰に一番相談しましたか
 一番相談した相手として、全体では「親・家族」(46.3%)が前回調査(44.0%)から2.3ポイント上昇し、4年連続で最も高くなった。回答者が、身近な社会人である親・家族に意見を求める傾向が続いている。次いで、「先生・教授」(32.7%)となったが、前回調査(34.5%)を1.8ポイント下回り、3年連続で回答割合が低下した。
 項目別では、「親・家族」は、中学・高校卒(51.2%)で5割超、大学・大学院卒(47.1%)でも4割を超えた。「先生・教授」は、専門・短大卒(50.0%)と中学・高校卒(36.5%)が、大学・大学院卒(8.8%)を大きく上回った。
 大学・大学院卒では、「親・家族」、「就職部」(22.1%)、「友人」(10.3%)の3項目が二桁台となった。より多くの意見を参考にしたようだ。

Q5 就職先の業種・職種・企業は第一希望ですか
 今回初めて質問項目に設けた「業種」について、就職先が第一希望であると回答した割合は、全体の77.6%となった。専門・短大卒(89.3%)と中学・高校卒(80.6%)で8割台、最も低い大学・大学院卒(60.3%)でも6割を超えた。
 次に、第一希望の「職種」に就職したとする回答割合は全体の76.2%で、前回調査(74.1%)を2.1ポイント上回り、3年連続で上昇した。
 また、「企業」は、前回調査(68.4%)比5.5ポイント低下の62.9%が第一希望であると回答し、最終学歴が上がるにつれ割合は低下した。
 なお、職種・企業とも第一希望先であると回答した割合は58.8%で、前回調査(62.7%)を3.9ポイント下回り5年ぶりに低下したものの、5割を超えた。また、業種・職種・企業全てが第一希望先とする割合は、57.5%であった。

Q6 県外での就職を希望したことがありますか
 県外での就職を希望したことがある割合は全体の46.3%と、本質問を設けた平成11年度以降、前回調査(45.3%)に次いで2番目に低くなった。人手不足による県内企業の採用活動の活発化、若年層の地元志向の高まりなどが影響し、引き続き低水準で推移したものと考えられる。
 ただし、前回調査と比べて、中学・高校卒(37.1%)は6.5ポイント低下した反面、大学・大学院卒(69.1%)は17.0ポイント、専門・短大卒(46.4%)は4.2ポイント、各々上昇した。
 県外就職を希望したことのある回答者136名のうち、実際に県外で就職活動を行った割合は39.0%と、前回調査(37.8%)から1.2ポイント上昇した。

Q7 県外での就職を希望した理由は何ですか
 前設問で「県外での就職を希望したことがある」とした136名に、希望の理由を質問した。
全体では、「都会での生活を体験してみたかった」(37.5%)が前回調査(30.8%)を6.7ポイント上回り、5年連続で最も高い割合となった。
 前回調査と比較すると、「地元より条件のよい勤め先があった」(17.6%)が8.3ポイント低下、「地元に希望する職種がなかった」(5.9%)は11.6ポイント低下した。県内の雇用情勢の改善により、回答者にとって、職業選択の幅が広がったものと推測できる。
 男性回答者では「都会での生活を体験してみたかった」(42.5%)が女性回答者(28.6%)を13.9ポイント上回った一方、女性では「地元や親元を離れて生活したかった」(38.8%)が男性(26.4%)を12.4ポイント上回った。

Q8 現在の職場でいつまで働きたいですか
<全体>
 全体では、「定年まで」(40.5%)と回答した割合が最も高くなったが、前回調査(42.7%)を2.2ポイント下回り、3年連続で低下した。
 前回調査と比べると、「条件や状況次第では転職する」(15.6%)が3.4ポイント、「技術を習得したり十分な経験を積んだら転職する」(5.1%)は0.3ポイント、各々低下した。また、「分からない」(16.7%)が9.1ポイント上昇した。県内企業の採用活動活発化を反映し回答者の就職先に対する満足度が高いため、安定志向が根強い。一方で、近年は社会情勢や産業構造の変化が加速している影響か、将来のビジョンを明確に描けずにいる新入社員も増えている様子が窺える。
<男性>
 「定年まで」(51.1%)が前回調査(59.1%)比8.0ポイント低下したが、最も高くなった。前回調査と比べて、「条件や状況次第では転職する」(18.5%)が5.7ポイント低下し、他方、「分からない」(15.2%)が8.7ポイント上昇した。男性では、定年までの勤続を望む傾向が続いている。
<女性>
 「結婚・出産後もできるだけ長く働きたい」(27.3%)が、前回調査(28.5%)から1.2ポイント低下したものの、最も高い割合となった。「定年まで」(22.7%)は前回調査(19.2%)を3.5ポイント上回り2年連続で上昇した一方、「結婚・出産を機に退職する」は前回調査(16.2%)比9.8ポイント低下の6.4%と、平成15年度に本設問を設置して以来、最も低い割合となった。28年の女性活躍推進法施行後、女性でも男性と同様に定年を見据え長く働き続けたいとする傾向が強まっている。

○売り手市場を反映し、新卒確保が困難化
 全国的に人手不足が強まり、売り手優位の就職市場では、給与水準が高く雇用条件の整備が進んだ大企業の人気が高いほか、企業による人材の奪い合いから内定辞退が増加している。その結果、中小企業や地方にある企業で新卒の確保が難しくなっている。
 東北6県の経営者協会(※1)が会員企業を対象に平成29年9月に実施した調査結果によると、当面の正規社員採用の考え方として、秋田県は、「新卒の一括採用重視」が6.6%と、他県を大きく下回った。一方、「新卒一括、中途採用の組み合わせ」(71.7%)と「通年採用(中途採用)重視」(21.7%)は、ともに東北全体を6ポイント以上上回った。県内の回答企業では、新卒の確保がより困難となっているため採用形態が多様化している。
 また、過去5年間の推移をみると、本県は、「新卒の一括採用」の回答割合が低下傾向にある反面、「新卒一括、中途採用の組み合わせ」は上昇し29年度に7割を超えた。東北全体でも同様の傾向がみられるが、「新卒一括採用」の減少幅は本県よりも緩やかである。県内では、少子化が進むなか、雇用条件の格差から新卒が県外に流出しているものと推測される。
 県内企業が全国大手並みの雇用条件を整備することは難しい。しかしながら、仕事の内容、転勤の少なさ、企業文化など固有の持ち味をアピールすることが、人材確保の一助となろう。第二新卒(※2)も含めたUターン就職希望者の増加にも繋がるものと考えられる。
(※1) 福島は、福島県経営者協会連合会
(※2) 第二新卒とは、卒業後就職したものの3年以内に退職した、または転職を希望する求職者を指す。

○新規高卒者、県内求人充足率の低下続く
 新規高卒者の県内求人充足率(※3)は、秋田労働局によると、平成30年3月末現在、35.6%と、前年同月(40.4%)と比べて4.8ポイント低下した。主な職業別の充足率では、建設業(17.2%)が最も低く、次いで、サービス業(22.2%)、医療,福祉(26.1%)、飲食店、宿泊業(28.8%)が2割台となった。
(※3) 充足率とは、就職内定者・決定者の人数を求人数で割ったもの。企業が希望通りの人員を採用できたかどうかの目安となる。

Q9 就職先を選んだ理由は何ですか
(3項目複数回答)
 全体では、「会社のイメージがよい」(42.2%)と「仕事の内容」(40.5%)が、4割を超えた。次いで、「自分の能力を活かせる」(27.2%)、「会社の将来性」(24.5%)、「通勤が便利」(20.1%)が2割台となった。
 「適切な勤務時間」(17.7%)は2年連続で、「休日が多い」(8.8%)は3年連続で各々回答割合が上昇し、「通勤が便利」も前回調査(15.8%)を4.3ポイント上回った。回答者は、自分の時間を大切に考え、企業の働き方改革への取り組みにも注目して就職先を選んだようだ。
 男性回答者では、「資格が取れる」(13.6%)が女性(0.9%)を12.7ポイント上回り、実利志向の考え方が窺える。

2 まとめ

 アンケート結果では、人手不足の深刻化により県内企業の採用意欲が高いことから、回答者の職業選択の幅が広がり、就職先への満足度は高く、引き続き安定志向が根強い。特に、女性回答者では、女性活躍推進の気運もあり、定年まで働きたいとする傾向が強まった。一方で、社会情勢や産業構造の変化などを背景に、先行き不透明感の表れからか、自身の将来像を明確に描けずに、就職先でいつまで働くか「分からない」とする新入社員も増えている。
(相沢 陽子)
あきた経済

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