経営随想
地方でのビジネスの魅力
寺田 耕也
(株式会社Local Power 代表取締役社長) <起業は秋田か東京か>
東京出身、秋田在住の私が4年前に起業を考えた際に、秋田でするか、東京でするか、ほぼ迷わず秋田での起業を選択した。これはビジネスの成功確率が上がるというビジネス的な観点よりも、どちらに住みたいかというのが大きかったと感じている。恥ずかしながら、事業で成功した際のイメージを膨らませ、都会の高層マンションで友人と夜景を見ながらのホームパーティーより、広い庭でみんなでワイワイとバーベキューの方が自分としては圧倒的に魅力的に感じた。
<秋田での生活>
現在、妻の実家である秋田県の中心部、つまり山間部に位置する旧河辺町岩見三内で生活している。家の裏には滝があり、庭にはミズやアザミ、ワサビなどの山菜が自生する。夏には滝つぼが子どもたちの恰好の遊び場となり、プライベートビーチと呼んでいる。冬には家の横の斜面でソリを楽しんでいる。季節のキノコや山菜、野菜などを親戚や近所から食べきれないほどいただき、朝の通学のバスに子どもたちを送りに行けば、子どもがランドセルに付けているクマ避けの鈴を合図に、毎日ご近所の方がわざわざ家から出てきて見送りに来て、声をかけてくれる。この環境が秋田市の中心地から通勤圏にあることは秋田での生活の大きな魅力である。
<ビジネスの概要>
弊社では除菌消臭水iPOSH(アイポッシュ)の製造販売をメイン事業として行っている。私の父が開発した特許技術を使い、湯沢市の工場で製造している。現在約5,000店舗の薬局で販売、約3,000の病院や福祉施設、学校、幼稚園や保育園でご利用いただいている。
<秋田での事業化のキッカケ>
私の父が開発した技術は、「飲めるほど安全 ※飲料ではない」で高い除菌効果を両立している。この技術が開発され、父から私に大量の技術資料が送られてきた。正直全く理解ができず、友人の医師である御所野ひかりクリニックの勝田院長に資料を見て貰った。多忙を極めているにも関わらず、徹夜で大量の資料を隅から隅まで見て、私にわかりやすく説明してくれ、医療業界に有用な技術だと評価してくれた。これが無ければ秋田での事業化はなかったと感謝している。
<製造>
iPOSHは弊社がメーカーとなり、製造しているが、これも地方だからできたと考えている。友人が経営に携わっていた電子部品の製造工場、ロイヤルパーツが所謂、下請け切りにあった。この工場に弊社で製造ラインの設備を整え、製造をして貰っている。30年以上のモノづくりの歴史を持っている会社で、品質管理、製造管理は今医療業界の方々が工場視察に来てもお褒めいただき、ご安心いただいている。
<門前払い→販路拡大のキッカケ>
商品の製造の体制ができ、次は販路である。今考えれば当然だが、医薬品でも無いiPOSHは、当初は医薬品卸に営業してもまともに取り合って貰えず、文字通り門前払いされていた。前述の友人の医師が医療業界に有用な技術と医薬品卸に話し、話を聞いて貰う機会をつくってくれた。約半年をかけて、大手医薬品卸に商品採用していただいたことが今日の販路拡大の大きなキッカケとなった。
<販路拡大における地方企業の強み>
各地にiPOSHの販路を拡大する中、秋田の方々から多くの応援をいただいている。販売開始して間もない頃には、秋田の薬剤師の方から福島に大学時代の友人がいるから行ってみたら?とご紹介いただいたこともあった。また、全国各地を回っていると秋田出身者が親身に協力してくださることがある。秋田に縁があるという意味では親や祖父母が秋田出身なども含めるとかなり多くの方々がいらっしゃる。また、アポイントを取る上でも元来ズボラな性格で直前のアポイントを取ることになった場合でも、「秋田からわざわざ来る」とかなり優遇してくれる。この点については甘えすぎず、できるだけ前もって、アポイントを取るように反省したいと思う。
<地方でのビジネスの魅力>
今では東京ではなく、秋田を拠点にビジネスをして、本当に良かったと思っている。生活面での魅力だけでなく、ビジネスの成功確率を上げる為にも正解だったと確信している。具体的な地方でのビジネスの魅力と感じているのは以下のとおりである。
・「身近に専門家」
→超一流の専門家は都市部に多いかもしれないが、一流の専門家が身近におり、気軽に相談に乗って貰える。どうしても超一流の専門家が必要な場合は一流の人がだいたいつながっており、ご紹介いただける。
・「目立つ」
→地方のみに特化したメディア、テレビの地方局や新聞の地方紙、地方版、ケーブルテレビや地元のタウン誌などもあり、メディアに載せて貰いやすい。それがキッカケとなり、県外からもお問い合わせをいただいている。
・「地域ゆかりの協力者」
→秋田在住者は勿論、秋田にゆかりのある方々に親しみを持っていただき、多くの方々にご協力いただける。
・「わざわざ秋田から」
→実際は飛行機なら羽田まで約1時間ですが、
なぜか遠いイメージがあるようで「わざわざ秋田から」とアポイントが取りやすい。またなかなか来れないだろうからと商談をスピーディーに進めていただける。
・「コストが安い」
→土地代など、コストが安く、ダイナミックなビジネスができる。
・「身近に専門家」
→超一流の専門家は都市部に多いかもしれないが、一流の専門家が身近におり、気軽に相談に乗って貰える。どうしても超一流の専門家が必要な場合は一流の人がだいたいつながっており、ご紹介いただける。
・「目立つ」
→地方のみに特化したメディア、テレビの地方局や新聞の地方紙、地方版、ケーブルテレビや地元のタウン誌などもあり、メディアに載せて貰いやすい。それがキッカケとなり、県外からもお問い合わせをいただいている。
・「地域ゆかりの協力者」
→秋田在住者は勿論、秋田にゆかりのある方々に親しみを持っていただき、多くの方々にご協力いただける。
・「わざわざ秋田から」
→実際は飛行機なら羽田まで約1時間ですが、
なぜか遠いイメージがあるようで「わざわざ秋田から」とアポイントが取りやすい。またなかなか来れないだろうからと商談をスピーディーに進めていただける。
・「コストが安い」
→土地代など、コストが安く、ダイナミックなビジネスができる。
<今後のビジネス展開>
まずは構築した販路にiPOSH以外の商品を上市したいと考えている。父の技術におけるパイオニア的な会社がにほか市の三浦電子である。非常に縁を感じ、iPOSHを事業化する際に県産業技術センターからのご紹介で挨拶に行かせて貰ったことをきっかけに、技術的な事を教えていただくなど非常にお世話になっている。
今までこの会社からは教えて貰うばかりだったが、この度共同で新製品を開発し、発売することができた。iPOSHは除菌消臭水だが、除菌消臭する前に洗浄をするとより効果的で、洗浄水と凹凸加工のプラスチック製専用ワイプ(ふきん)をセットにしたiWASH(アイウォッシュ)という商品だ。ワイプは大手の製紙メーカーの商品開発部にご協力をいただいているが、ここをご紹介いただいたのは県内にある大手製紙メーカーの関連会社の社長である。一方的なご協力は長続きしない。あくまでもギブアンドテイクが基本だと考えている。その為にも地力を付け、今までお世話になることの方が圧倒的に多いが、私や会社も恩返ししていけるようにしていきたいということも事業の大きなモチベーションとなっている。
今後益々、県内に眠っている技術を生かした商品化やサービス構築をしていきたい。また、販路をつくるのが得意なので県内企業とタッグを組み、既にある販路は勿論、新規の販路開発も行っていきたい。地方の強みを生かし、地方で商品やサービスをつくり、販路をつくっていきたいと考えている。
今までこの会社からは教えて貰うばかりだったが、この度共同で新製品を開発し、発売することができた。iPOSHは除菌消臭水だが、除菌消臭する前に洗浄をするとより効果的で、洗浄水と凹凸加工のプラスチック製専用ワイプ(ふきん)をセットにしたiWASH(アイウォッシュ)という商品だ。ワイプは大手の製紙メーカーの商品開発部にご協力をいただいているが、ここをご紹介いただいたのは県内にある大手製紙メーカーの関連会社の社長である。一方的なご協力は長続きしない。あくまでもギブアンドテイクが基本だと考えている。その為にも地力を付け、今までお世話になることの方が圧倒的に多いが、私や会社も恩返ししていけるようにしていきたいということも事業の大きなモチベーションとなっている。
今後益々、県内に眠っている技術を生かした商品化やサービス構築をしていきたい。また、販路をつくるのが得意なので県内企業とタッグを組み、既にある販路は勿論、新規の販路開発も行っていきたい。地方の強みを生かし、地方で商品やサービスをつくり、販路をつくっていきたいと考えている。
<地方の課題解決>
今後は地方でビジネスを行っていく上で課題となることを解決したい。最も深刻なことは人手不足だと思う。人手不足を補う為、効率化のためのIT技術の紹介や海外から人を受け入れる実習生事業を準備している。また弊社の事業は精神や身体に障がいのある方々が働く就労支援施設無しでは成り立たない。iPOSHのボトルにフィルムを付ける作業から始まったが、今では容器の傷を見つけ、はじいていただいたり、品質の維持でも多大なる貢献をいただいている。商品に愛着を持ち、少しの傷も見逃さないという姿勢には頭が下がる。また、弊社の社員は半数以上が女性で、子育て中の方もいる。まだまだ充分ではないが、短時間勤務などの少しの工夫でこのような人材にも大いに活躍していただいている。このように眠っている県内の人材の活用にも力を入れていきたいと考えている。
<最後に>
地方はビジネスをつくるのには非常に恵まれた環境だと実感している。今後も地域の皆様とタッグを組みながら、商品開発を行い、販路を構築し、少しでも恩返しをしていきたい。
末筆ながら、私のように駆け出しの経営者が、「あきた経済・経営随想」への寄稿の機会をいただいたことに心より感謝申し上げたい。
末筆ながら、私のように駆け出しの経営者が、「あきた経済・経営随想」への寄稿の機会をいただいたことに心より感謝申し上げたい。
(会 社 概 要)
1 会社名 | 株式会社Local Power |
---|---|
2 代表者名 | 代表取締役社長 寺田耕也 |
3 所在地 | 秋田市八橋大畑2-3-1 White Cube 1F |
4 電話番号 | 018-838-6943 |
5 FAX | 018-803-4884 |
6 URL | http://lpower.jp |
7 設立年月日 | 平成25年11月25日 |
8 資本金 | 3,000,000円 |
9 年商 | 1億3千万円 |
10 従業員 | 9名 |
11 事業内容 | 化学製品製造販売 |
12 コンセプト | 地方で製品やサービスをつくり、外に販路をつくる |