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「平成28年経済センサス-活動調査」からみた秋田県の概況
 ‐民営事業所数は48,838事業所、従業者数は414,947人‐

 先頃、総務省及び経済産業省は「平成28年経済センサス-活動調査」の速報結果を公表した。速報によると、平成28年6月1日時点の秋田県の民営事業所数は48,838事業所、従業者数は414,947人となり、4年前に実施した「平成24年経済センサス-活動調査」をいずれも下回る結果となった。本稿では速報結果に基づき、全国及び本県の民営事業所の現状や、この4年間における産業構造の変化等について概観する。なお、速報結果の数値は、後日公表される確報と相違する場合がある。

1 全国の事業所数・従業者数

 総務省及び経済産業省が5月末に公表した「平成28年経済センサス‐活動調査」の速報によると、平成28年6月1日時点の全国の民営事業所数(事業内容等が不詳な事業所を除く。以下、「事業所」)は536万事業所となり、4年前に実施した活動調査(24年2月1日時点)の545万事業所から1.7%減少した。全国で減少率が最も大きかったのは、昨年4月に大地震に見舞われた熊本県で5.0%減となった。
 一方、全国の事業所で働く従業者数は5,584万人から2.9%増加し、5,744万人となった。2年前に実施した基礎調査(26年2月1日時点)との比較でも僅かに増加しており、24年末の政権交代を起点とした緩やかな景気回復の動きを背景に、企業の雇用意欲が活発化している状況が窺える。全国で増加率が最も大きかったのは、人口が増加している沖縄県で8.4%増となった。

2 秋田県の事業所数・従業者数

 秋田県の動向についてみると、事業所数は48,838事業所となり、前回活動調査の50,817事業所から3.9%減少した。従業者数も418,749人から0.9%減少し、414,947人となった(図表1)。全国の状況をみると、事業所数は42都道府県で減少した。東北では本県、青森県(2.0%減)及び山形県(3.6%減)で減少した一方、宮城県(5.9%増)、岩手県(1.8%増)及び福島県(0.1%増)では増加しており、東日本大震災の被災地3県では、事業活動を再開したり、避難先から戻ったりする企業が増え、産業の復興が進んだものとみられる。従業者数では34都道府県で増加し、減少したのは本県のほか、長崎県(1.9%減)、愛媛県(1.0%減)など13県となっている。
 また、本県の事業所数の全国順位は37位、従業者数は39位となっており、前回活動調査から順位に変動はない。全国シェアをみると、人口の0.8%に比し、従業者数は0.7%と0.1ポイント下回っているものの、事業所数は0.1ポイント高い0.9%となっている。
 1事業所当たり従業者数は、全国平均の10.7人に対し、本県は8.5人である。東北では、宮城県が全国平均を0.4人下回る10.3人となっているが、本県は最も低い8.5人にとどまり、全国でも43位となっている。

3 秋田県の産業別の事業所数・従業者数

秋田県の産業大分類別の事業所数・従業者数は以下のとおりである。
(1)事業所数
 本県の事業所数48,838事業所のうち、事業所数の多い産業は、①「卸売業,小売業」、②「生活関連サービス業,娯楽業」、③「宿泊業,飲食サービス業」、④「建設業」、⑤「医療,福祉」の順となっている。上位4産業の順位は4年前から変動ないものの、前回活動調査で7番目だった「医療,福祉」が5番目となり、「製造業」と順位が入れ替わった。
 前回活動調査と比較した増減率をみると、「金融業,保険業」が13.3%減、「情報通信業」が9.5%減、「製造業」、「運輸業,郵便業」が各9.2%減となるなど10産業で減少となっている。一方、農業経営の法人化が進んだ「農林漁業」が18.0%増、再生可能エネルギー関連の発電事業者が増えた「電気・ガス・熱供給・水道業」が53.5%増となったほか、「医療,福祉」も16.6%増となるなど6産業で増加した。

(2)従業者数
 本県の従業者数の多い産業は、①「卸売業,小売業」、②「製造業」、③「医療,福祉」、④「建設業」、⑤「宿泊業,飲食サービス業」の順となっており、上位10産業まで前回活動調査から順位の変動はない。
 前回活動調査と比較した増減率をみると、「金融業,保険業」が16.2%減、「運輸業,郵便業」が10.9%減、「建設業」が6.2%減となるなど9産業で減少となっている。一方、郵便局の従業者数が増えた「複合サービス事業」が26.8%増、農業経営の法人化により就農者数が増えた「農林漁業」が21.6%増となったほか、「医療,福祉」も12.5%増となるなど8産業で増加した。

4 秋田県の企業等の経理事項

 秋田県の産業大分類別の売上(収入)金額、付加価値額等は以下のとおりである。なお、売上金額等の経理事項の数値は、平成27年1年間の活動によるものである。
(1)売上(収入)金額
 秋田県の産業大分類別の売上金額をみると、「卸売業,小売業」が1兆5,527億円と最も多く、「製造業」が8,353億円、「建設業」が6,226億円などとなっており、上位3産業で全産業の67.0%を占めている。これら3産業について前回活動調査と比較した増減率をみると、「卸売業,小売業」が11.9%増、「製造業」が5.0%増、「建設業」が23.5%増となるなど、全産業でも12.0%増加した。

(2)付加価値額
 付加価値額をみると、「製造業」が2,430億円と最も多く、「医療,福祉」が2,295億円、「卸売業,小売業」が2,093億円などとなっており、上位3産業で全産業の57.7%を占めている。これら3産業について前回活動調査と比較した増減率をみると、「製造業」が37.5%増、「医療,福祉」が8.2%増、「卸売業,小売業」が1.3%増となるなど、全産業でも16.6%増加した。

5 経営指標を用いた産業間比較

 「経済センサス活動調査」では、産業別の売上金額、付加価値額のほかに、費用総額、給与総額なども把握でき、これらの経営指標を用いた産業間比較(※)を行ってみる。(※)「金融業,保険業」及び「電気・ガス・熱供給・水道業」は、他の産業と売上の概念や事業の性質等が異なり、産業間比較になじまないため、比較対象から除く。
(1)収益性
 企業収益については、売上高から費用総額(売上原価と販売費及び一般管理費の合計)を差し引いたものが「営業利益」となり、営業利益の売上高に対する比率「売上高営業利益率」が、企業の収益性をみる指標として用いられる。
 本県の「売上高営業利益率」は、「宿泊業,飲食サービス業」が14.8%と最も高く、「教育,学習支援業」が3.1%と最も低くなっている。

(2)生産性
 生産性をみる指標としては、「従業者1人当たり付加価値額(労働生産性)」、「従業者1人当たり売上高」があるが、速報の段階では、必要な経理事項の数値が得られた企業等の従業者数が公表されていないことから、ここでは「売上高付加価値額率(付加価値率)」についてみてみる。「売上高付加価値額率(付加価値率)」は、この値が大きいほど人件費以外のコストが小さいといえる。
 本県の「売上高付加価値額率(付加価値率)」は、「医療,福祉」が52.1%と最も高く、「卸売業,小売業」が13.5%と最も低くなっている。

(3)人件費
 人件費をみる指標としては、「従業者1人当たり給与総額」があるが、前述のとおり従業者数が公表されていないことから、ここでは「付加価値額給与総額率(労働分配率)」についてみてみる。「付加価値額給与総額率(労働分配率)」は、企業が生み出した付加価値がどれだけ人件費に分配されているかを分析することできる。
 本県の「付加価値額給与総額率(労働分配率)」は、「教育,学習支援業」が92.4%と最も高く、「生活関連サービス業,娯楽業」が55.6%と最も低くなっている。

6 まとめ

 本県の事業所数及び従業者数は減少傾向にあるが、産業別にみると「医療,福祉」で大幅に増加したほか、農業や電気業でも増加するなど、本県の地域特性を活かした産業で動きがみられる。先月号の「経済の動き」に掲載したとおり、本県の開業率は全国に比べ低い状況にあるが、地域経済を活性化させるためには、起業を通じて新たな産業や雇用を創出していく取り組みが重要である。一方、企業等における売上金額、付加価値額は増加している。昨今、人手不足の深刻化や長時間労働の是正のため、労働生産性の向上が重要視されているが、今後も労働生産人口の減少が続くことから、各産業ともAIやIoT等の新規技術の導入を急ぎ、労働生産性の向上を図る必要がある。
(山崎 要)
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