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秋田県のインバウンド現状把握調査(前編)

 当研究所は、平成29年1~2月、本県インバウンドの現状を把握するため、県内宿泊施設を対象に、アンケートとヒアリングによる調査を実施した。

要 旨

1 アンケートにご回答いただいた県内宿泊施設286か所において、平成28年外国人延べ宿泊者数のエリア別構成比をみると、仙北地域(34.2%)と秋田地域(32.9%)が3割超、鹿角地域(18.8%)が1割を超え、他エリアを上回った。月別構成比では、割合が高い順に、10月(23.2%)、11月(11.3%)、4月(10.1%)となり、外国人宿泊者は秋と春の行楽シーズンに多い傾向がみられた。
2 国籍・出身地域は、台湾(41.5%)、韓国(15.7%)、中国(6.2%)、香港(5.7%)、アメリカ(5.3%)などの割合が高く、上位10か国・地域のうちアジアが7か国・地域を占めた。
3 農家民宿については、外国人延べ宿泊者の7割超が仙北地域に集中している。月別構成比では、10月(28.1%)、11月(19.8%)、8月(16.1%)、12月(11.0%)が1割を超え、8月と秋季に宿泊が偏る傾向がある。国籍・出身地域別にみると、タイ(20.9%)、台湾(16.8%)、アメリカ(16.6%)の順に割合が高い。

はじめに

 当研究所は、平成29年1~2月、本県インバウンドの現状を把握するため、県内宿泊施設を対象に、アンケートとヒアリングによる調査を実施した。アンケート調査では、宿泊施設540か所に郵送で調査票を配布し、うち286か所から回答をいただいた。前頁の調査要領にある宿泊施設タイプの区分は、各施設の回答に基づくものである。
 本調査は、観光庁「宿泊旅行統計調査」と異なる調査であり、また、インバウンド観光は市町村単位の観光ではなく周遊型が主流であるためエリア別の集計とした。

1 アンケート調査編

(1)外国人宿泊者について
a エリア別構成比
 アンケートにご回答いただいた県内宿泊施設286か所における平成28年外国人延べ宿泊者数のエリア別構成比をみると、仙北地域(34.2%)と秋田地域(32.9%)が3割を超えた。鹿角地域(18.8%)も二桁台と、割合が高い。
 日本人を含む全体の延べ宿泊者数では、秋田地域の構成比(43.9%)は仙北地域(20.5%)の2倍以上であるが、外国人延べ宿泊者数に関しては仙北地域の構成比が最も高く、外国人旅行者の間では県内一の目的地となっている。
 対前年増加率は28.2%で、延べ宿泊者数の増加率(2.8%)を大きく上回っている。

b 月別構成比
 月別構成比では、10月(23.2%)が最も高く、続いて、11月(11.3%)と4月(10.1%)も1割超となった。日本人も含む宿泊者全体では、8月(11.9%)、10月(10.8%)など、秋田竿燈まつりや全国花火競技大会に代表される夏祭りのシーズン、秋の行楽シーズンに宿泊者が多い傾向にあるが、外国人宿泊者では秋と春の行楽シーズンに多い傾向がみられる。例年、秋と春に秋田空港で台湾からのチャーター便が運航されていることが影響しているものと推測される。

c 四半期別構成比
 外国人延べ宿泊者数の四半期別構成比では、秋(10~12月)が39.8%で最も高く、続いて、夏(7~9月)が24.1%、春(4~6月)が21.5%とともに2割台となり、冬(1~3月)は14.6%となった。日本人を含む延べ宿泊者数の構成比では、夏の割合が高く、冬が低く、春と秋はその中間という割合になっているが、外国人宿泊者は秋の割合が高い。
 全県の傾向と同様に、県内7エリアのうち4エリアでも秋の割合が最も高く、なかでも鹿角地域(53.3%)は5割を超える。一方、北秋田地域は春(34.8%)が、山本地域と平鹿・雄勝地域は夏が各々42.9%、37.1%と、最も高い。
 宿泊施設タイプ別では、農家民宿(58.9%)、リゾートホテル(52.0%)、会社・団体の宿泊所(51.0%)は秋が5割超、旅館(44.0%)も秋の割合が高い。簡易宿所とビジネスホテルは、夏が各々、39.6%、30.6%と、他の宿泊施設タイプを上回った。シティホテルは、四半期による違いがあまり大きく表れていない。
 外国人宿泊者は、日本人を含む宿泊者全体と比べて、ビジネスホテルとシティホテルを除く全宿泊施設タイプで、秋の割合が10ポイント以上高くなり、特に農家民宿、会社・団体の宿泊所、リゾートホテルでは20ポイント以上も上回っている。

d 延べ宿泊者数全体に占める外国人延べ
宿泊者数の割合
 平成28年の延べ宿泊者数全体に占める外国人延べ宿泊者数の割合は2.5%で、前年と比べて0.5ポイント上昇した。
 エリア別にみると、鹿角地域(5.6%)と仙北地域(4.1%)の割合が高い一方で、北秋田地域(0.8%)は1%を下回っている。前年と比べて、横這いとなった由利地域を除く6エリアで割合が高まった。
 宿泊施設タイプ別では、リゾートホテル(8.6%)と農家民宿(6.2%)が高く、簡易宿所(0.3%)が低い。また、前年と比較すると、旅館(△0.1ポイント)を除く全宿泊施設タイプで増加し、なかでも、農家民宿(+2.8ポイント)の伸びが大きい。
 なお、外国人宿泊者が「0」と回答した施設は、27年が140か所(全回答施設の49.0%)、28年は106か所(同37.1%)であった。

(2)外国人宿泊者の特徴について
 以下、aからcまでの項目は、平成28年についての調査で、当該年単年の傾向を表している。
a 国籍・出身地域
 外国人宿泊者の国籍・出身地域は、上位10か国・地域のうち、アジアが7か国・地域を占め、台湾(41.5%)の構成比が最も高い。以下、韓国(15.7%)、中国(6.2%)、香港(5.7%)、アメリカ(5.3%)と続く。
 エリア別にみると、鹿角地域では、台湾(71.8%)の割合が圧倒的に高い。北秋田地域では、中国(19.0%)、台湾(17.2%)、韓国(15.9%)、香港(13.7%)がいずれも1割台で、国籍・出身地域にあまり偏りがみられない。山本地域ではドイツ(54.7%)が、平鹿・雄勝地域ではフィリピン(34.5%)の割合が高い。秋田地域は全県と似た傾向を示している。由利地域では、韓国が23.0%で、仙北地域(23.2%)とともに2割を超えた。仙北地域では、タイが5.9%と、他エリアを上回った。
 宿泊施設のタイプ別では、リゾートホテルと旅館で台湾の割合が高く、各々、65.7%、49.6%となった。ビジネスホテルは上位5か国・地域以外の「その他の国・地域」(38.6%)が他の宿泊施設タイプを上回り、より多様な国籍・出身地域の外国人が宿泊しているものと推測される。シティホテルは、全県の傾向に似た傾向が表れた。会社・団体の宿泊所はモンゴル(33.5%)が、農家民宿はタイ(20.9%)が最も高い。簡易宿所はアメリカと韓国の利用が高い(20.5%)。

b 特徴点
 自由記入欄に記載のあったものの中から、各地域ごとの特徴的な記述を抜粋した。

c 来秋目的
 外国人宿泊者の来秋目的は、観光・レクリエーション(73.1%)が7割を超え、最も割合が高い。次いで、ビジネス(出張・業務・研修)が23.0%、その他(学校行事・スポーツ大会・学会等)が3.9%である。
 観光・レクリエーションは、鹿角地域(92.7%)と仙北地域(92.0%)で9割超、秋田地域(61.6%)も6割を超える。ビジネスは、山本地域(81.8%)、由利地域(65.4%)、平鹿・雄勝地域(65.4%)、北秋田地域(61.9%)で割合が高い。その他については、北秋田地域(9.6%)と秋田地域(9.3%)が1割近くと、他エリアを上回った。
 宿泊施設のタイプ別では、リゾートホテル(96.8%)と旅館(89.4%)は観光・レクリエーションの割合が高く、会社・団体の宿泊所はビジネス(86.3%)が高い(図表13)。簡易宿所(27.2%)と農家民宿(21.5%)はその他が2割を超え、他宿泊施設タイプを上回った。

(3)農家民宿の外国人宿泊者の特徴について
a エリア別構成比
 アンケートにご回答いただいた県内農家民宿47か所における平成28年外国人延べ宿泊者数のエリア別構成比をみると、仙北地域(71.5%)が抜きんでて高い。対前年増加率は94.8%で、全施設の増加率(28.2%)と比べ、農家民宿は伸び率が大きい。
 なお、外国人宿泊者が「0」と回答した農家民宿施設は、27年が33か所(回答のあった農家民宿全体の70.2%)、28年は26か所(同55.3%)であった。
 なお、鹿角地域は宿泊施設タイプとして農家民宿に該当する回答がなかった。

b 月別構成比
 農家民宿の外国人延べ宿泊者数の月別構成比については、10月(28.1%)が最も高く、続いて、11月(19.8%)、8月(16.1%)、12月(11.0%)の順に高い。全施設の外国人延べ宿泊者数は秋と春の行楽シーズンに多いが、農家民宿は8月と秋季に宿泊が偏る傾向がある。

c 国籍・出身地域
 農家民宿における延べ外国人宿泊者の国籍・出身地域別構成比は、タイ(20.9%)、台湾(16.8%)、アメリカ(16.6%)の順に高い。
全施設の国籍・出身地域としては、台湾、韓国、中国、香港の順に割合が高いのに対し、農家民宿はタイの宿泊者割合が特に高い。また、ロシア、ニュージーランド、モンゴルが上位10か国・地域に入ることも特徴である。
 後編では、ヒアリング調査の結果と、2つの調査結果を踏まえた現状分析について掲載する予定である。
(相沢 陽子)
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