経営随想
「 絆 」
(株式会社菅与 取締役工場長)
弊社は1989年に創業、畜産飼料販売を基盤とし、1991年養豚業、2005年酪農業・産業廃棄物処分業に進出するとともに、食品リサイクル工場を立ち上げました。本来の畜産飼料販売に加え、食品リサイクル工場による「地球にやさしい牧場づくり」をテーマとして、これまでエコフィード(食品ロスを使用した液状飼料)生産および直営養豚、酪農による畜産生産の多角化(従業員110名、うち食品リサイクル工場10名、高齢者、身障者を含め貴重な雇用の場ともなっています)を進めています。
食品リサイクル工場では秋田、山形、岩手、宮城、福島の東北各県の食品メーカーと連携し、メーカーの製造過程で排出されるものや、副産物(おから、チーズホエー、焼酎の搾りかす)、流通在庫など、それまで焼却処分されていた貴重な資源を無駄なく飼料化しております。麺類、おから、パン、菓子類、大豆製品、ジュースの搾りかすなど年間5,800トン以上を受け入れ、広域収集型リキッドフィーディングシステム(食品ロス等の食品原料に乳酸菌を混ぜて分解発酵させ、液状になった発酵飼料を家畜に与える仕組み)を導入している点に特徴があります。
「もったいないな・・・」と工場見学にいらした方々は必ず言われます。しかし今までこうした莫大な食品ロスを莫大な燃料を使い莫大なCO2を排出し焼却していた・・・この事実。私たちはスーパーなどで買い物をしますが、この行為の裏側にはさまざまなストーリーがあるのです。スーパーから食品工場に注文が入ると製造方では必ず多めに作ります。もし何かトラブルがありスーパーに陳列できなかった事を想定します。そうすると何もなかった場合、在庫が残ります(流通在庫)。また、商品は出来たがパッケージにミスがあると、全て廃棄となります。製造中に「もしかしたら」異物が混入したかもしれない。そうすると、製造中のものは全て廃棄します。私たちが商品を口にするまでには多くの問題をクリアしたものがスーパーへと陳列されるのです。
輸入に頼りきりの日本。油代をかけ、CO2を排出し日本へ原料が入ってくる。そこから工場までまた運びます。そして使われることなく廃棄となる食品原料も様々あります。まさに「もったいない・・・」。この「もったいない」に着目し、弊社の食品リサイクル工場では多くの食品ロスを受け入れ液状の飼料を製造しています。しかし勘違いしないでください。今、私がこれまで説明をした中で、レストランの残飯、コンビニ弁当、給食の残りなど一切出てきていない事にお気付きになられましたか?そうです。いわゆる一般廃棄物といわれるものの受け入れは一切していなのです。一般廃棄物は脂分、塩分、食品添加物が多く栄養が偏り正確な飼料配合ができなくなるのです。そして一番の問題はゴミの混入です。我々もレストランへ行き、よく目にするのがゴミと残飯の区別がなく全て一緒に処分されるということです。実際、見ず知らずの人が食べ残した物を餌の原料として豚を育て、その豚肉を食べたいと皆さんは思いますか?私は絶対食べたくはありません。安心、安全をうたうのなら、弊社のような餌へのこだわりを徹底し、より安全で美味しいものを供給するという事が大事だと私は思います。
食品リサイクル工場では全てが手作業です。袋入りのパンや豆腐、納豆など未開封のものの分別。ゴミの混入、カビの発生はないかという確認作業。人間の最大の武器となる五感をフル活用し餌作りをしております。このような手作業分別をすることにより地域の雇用の拡大(高齢者、身障者)にもつながります。こうして育て上げた豚が「エコの森 笑子豚(エコブー)」となります。商品の特徴としましては、一般豚に比べカロリーが1/3低いことや甘みが23倍あることです。ぜひ、弊社の豚肉を食していただき、「食べるエコ活動」にご協力ください。
ここで3・11の大震災時のお話をしたいと思います。ライフラインが全てストップした日から数日間、悲惨な被災情報ばかりが私の耳へと入ってきました。養豚・酪農業を営む弊社ですが、「飼料メーカー壊滅」で餌が無いのです。幸い弊社は農場、工場とも建物自体に大きな影響はありませんでした。ただ、餌が無い・・・食品リサイクル工場内にあるものではもって数日、そこで地震当日から地震の影響がないであろうと思われる食品工場並びに副産物管理会社へ手当たり次第電話を掛けました。そして、やっとの思いで何とか手にした飼料にかわる原料を、車のガソリンが不足した中で農場やお客様へ配達に回りました。こうして、大震災後の急場を従業員全員が「火事場の馬鹿力」と思われるほどの力を出し合い一日、一日を乗り越え今に至ります。
最悪の事態に何かが見えた気がします。それは人と人との「絆」ではなかったかと今あらためて思います。燃料がみな乏しい中、「菅与さんのためなら油がある限りどこまでも走りますから」と言ってくれた運送業者様。「飼料も原料も足りないでしょ?声掛けするから!いつも世話になってるし、こんな時はお互い様だべ」と言ってくださった食品メーカー様。「電話をもらえば、夜中でも仕事に出てきますから今できることを頑張りましょう」と言ってくれた社員たち。
皆様に生かされ生きていられるんだなとつくづく実感する毎日でした。この恩を一生忘れることなく「地球にやさしい牧場づくり」をテーマにこれからも日々励んでまいります。
会 社 概 要
1 社 名 | 株式会社菅与 |
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2 代表者名 | 代表取締役 菅原一範 |
3 所在地 | 〒013-0103 秋田県横手市平鹿町下鍋倉字下六ッ段132-1 |
4 電話番号 | 0182-24-3298 |
5 FAX番号 | 0182-24-3299 |
6 設立年月 | 平成元年4月 |
7 資本金 | 7,000万円 |
8 年 商 | 21億円 |
9 従業員数 | 100人 |
10 事業内容 | 飼料・肥料販売、養豚業・酪農業、食品リサイクル(家畜飼料製造)、食肉販売・通信販売 |