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経営随想

秋田県の活性化に向けて

伊藤 碩彦
(株式会社伊徳 代表取締役会長)
 昨年11月、「公益財団法人・伊徳地域振興財団」がスタートし、今年の4月18日、第1回目の助成金贈呈式を大館市で行いました。
 この財団は地域の産業振興、人口減少・少子高齢化等の課題克服、および特色のある事業育成等に対し、微力ながらお手伝いができないものかと考えて設立したもので、年間助成金額を300万円、1件当たり最大100万円としました。

 ご承知のように、私達の住んでいる秋田県は全国で最も人口減少が著しく、また少子高齢化も深刻な状況です。人口が減少すると学校や病院、商店などが立ち行かなくなり、住みにくくなるので更に減少に拍車がかかることになります。何とかしてこの減少を食い止めようと、行政や商工団体などもいろいろ手を尽くしているようですが、大都市と違って地方の場合はなかなか難しいのが現状です。要は如何にして雇用を増やし、所得を上げるかということですが、思うように進んでいません。
 しかし、全国を見回すとあちこちに成功事例が見られます。県内でも大潟村は大規模な農地を使って生産性の高い農業を実現し、高い所得水準で人口減少に歯止めをかけていますし、
「北限の桃」や「どじょうの養殖」なども最近話題になっており、地方でも付加価値の高い事業が成立する余地はまだまだ存在すると感じています。
但し、よく言われる秋田の県民性、つまり消極的で現状維持型の意識を変えて、もっとチャレンジ精神を持たなければ、なかなか人口減少にはブレーキが掛からないのではないかと考えます。
 この財団は、県内は元よりインターネットも活用し、全国の大学や研究機関から、秋田県やその周辺などの、似たような環境にある地域を元気にする提案を募集し、選考・審査の上で助成を行うこととしました。その審査のポイントは、

① 卓抜したアイデア(企画力)
② 旺盛なチャレンジ精神(実行力)
③ 期待される成果(実現性)

の3点です。
 今回は21件の応募があり、初年度としては予想以上でした。また助成金の贈呈は100万円が1件、50万円が4件でした。その内容は財団のホームページで紹介しております。
ささやかな財団ですが、産学協同の意識を高める意味でも、多くの有益なご提案を頂けることを期待致しますとともに、人口減少・少子高齢化に歯止めを掛ける一助になれば幸いです。

 この財団を作るきっかけになったのは、平成24年から3年間取り組ませて頂いた県内のロータリークラブの集まり(国際ロータリー第2540地区)での活動でした。
 「経済活性化プロジェクト」という委員会を立ち上げ、各クラブがそれぞれの地域の事業所や団体の中からチャレンジ精神で成果を上げているところを推薦し、15分程度の発表を行って頂きました。毎年15~18の事例について、県北、中央、県南で予選を行い、全県の集まり(地区大会)で優秀な事例を表彰しました。また、その記録を小冊子やDVDにまとめ、配布しました。
 取り組みを通じて、県内には新しいことにチャレンジして成果を上げている事業所や団体が実に沢山あることに驚きました。このイメージを多くの人が共有すれば更に大きな盛り上がりになるのではないか、と実感しました。
 プロジェクトが一段落してからも、何とか引き続き同じようなことが出来ないものかと考えて財団という形にしてみましたが、いろいろ制約があり、応募する人についての制限や、「賞金」もだめで「助成金」になりました。しかしこれはこれで新しいチャレンジだとも考えております。

 私の本業はスーパーマーケットの経営ですが、50年余りやってみて、何とか今日まで続けられたのは幾つかのポイントがあったように思います。その一つは昭和42年に初めてアメリカを視察して、まだ日本で自家用車に乗っている人がほとんどいなかった時代に、すでに完全な車社会だったことで、いずれ日本もこうなると確信し、以後多いときは2~3年毎にアメリカに勉強に行ったことでした。つまり目標がはっきり見えていたことです。
 二つ目はチャレンジです。本来は石橋を叩いても渡らない引っ込み思案の私ですが、やむを得ず親の後を継いで経営者になると、そうも言っていられません。幹部社員に辞められると会社が成り立たなくなりますので、思い切って借金をして店を出すというような事もありました。たまたまそれが成功して今度は調子に乗って失敗もしましたが、次第にコツが分かってきたように思います。チャレンジしなければ会社は成長しません。
 三つ目は人材です。会社は自分1人だけではどうにもなりません。ある程度任せられる幹部社員が必要です。しかし、それは誰でもなれる訳ではありません。与えられた権限の中で結果を出せる人でなければなりません。私の場合は比較的恵まれた方だと思いますが、それでも会社の規模が大きくなるにつれて、より大きな組織を動かすのは難しくなります。近くに人材が見つからなければ、思い切って報酬を弾んででも外部から招請する方法もあります。私も最近は、自分よりも能力のある人に任せて、自分は経営者を辞めて資本家になったほうがいい、と思っているくらいです。
 つまり、

① 将来を見据えた目標を立てる
② チャレンジ精神
③ 優秀な人材

 これら企業を成長させる三つのポイントは、スーパーマーケットだけでなく、大抵の企業に当てはまるのではないかと思います。
 年齢と共に、若い頃のように自分が動き回って情報を集め、実行し、結果を出す、ということは思うように出来なくなり、専ら頭の中でのシミュレーションと、口先だけの仕事が多くなりましたが、自分たちの生まれ育ったこの地域の活性化のために、もう少し何かをやってみたいと思っています。

(財 団 概 要)

名 称 公益財団法人 伊徳地域振興財団
代表者 代表理事 伊藤 碩彦
所在地 株式会社伊徳 本社内
TEL/FAX 0186-59-5075
URL https://www.itoku-foundation.com
公益目的事業 助成・顕彰事業
(地域の産業振興、人口減少、少子高齢化等の課題克服、および特色のある事業育成など)

(会 社 概 要)

1 会 社 名 株式会社 伊徳
2 代表者名 代表取締役会長 伊藤 碩彦
代表取締役社長 塚本 徹
3 所 在 地 〒017-0046 大館市清水四丁目4番15号
4 T E L 0186-49-2255
5 F A X 0186-49-7302
6 U R L http://www.itoku.co.jp
7 設立年月 明治32年6月
8 資 本 金 5,000万円
9 年  商 512億円(平成30年3月末)
10 従 業 員 2,559人(平成30年3月末)
11 事業内容 小売業(スーパーマーケット)
12 社  是 お客様にご不自由をかけるな。
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