トップ機関誌「あきた経済」トップ第98回県内企業動向調査(平成30年3月調査)

機関誌「あきた経済」

第98回県内企業動向調査(平成30年3月調査)

 平成29年度下期(29年10月~30年3月)における県内企業の業況判断(実績見込)は、業績全般BSIが29年度上期(29年4月~9月)に比べて、11ポイント上昇の3となった。BSIがプラスとなったのは、平成25年度下期以来、4年ぶり。県内企業の業況感は、大型イベント効果の剥落から売上の低迷が続いている観光、人手不足による受注減が続くサービスなどで悪化したものの、受注が上向きつつある衣服縫製、木材・木製品で改善したほか、付加価値の高い日本酒の販売が堅調な酒造で改善がみられたことなどから、全体として改善する結果となった。
 30年度上期(30年4月~9月)の業績全般BSI(見通し)は、29年度下期に比べて4ポイント低下の▲1となった。機械金属、観光、サービスの各業種で改善する見通しとなっているが、衣服縫製、木材・木製品、建設、卸売・小売などで悪化する見通しとなっている。
 30年度の設備投資計画額は、機械金属、衣服縫製、運輸、観光などでの増加を受けて、前年度実績比0.8%増の272億6,600万円となる見通し。
経営上の問題点では「人材不足」が前年度に続き最上位となった。また、30年4月入社の新卒採用については、「採用がある」企業の割合が53.1%となった。
 賃上げについては、29年度に「実施した」企業が78.5%となった。また、30年度以降の賃上げの予定については、「実施予定」が71.5%となった。

1 業況判断

(1)業績全般BSI
29/下(29年10月~30年3月)実績見込
 全産業の業績全般BSI(前期比「上昇」割合-「下降」割合)をみると、平成29年度下期(以下、「29/下」)の実績見込は、29年度上期(以下、「29/上」)に比べ11ポイント上昇の3と業況感が改善した。BSIがプラスとなったのは平成25年度下期以来、4年ぶりである。
 産業別にみると、製造業では、電子部品でやや悪化したものの、自動車関連市場向け等が好調のため高水準を維持している。機械金属では前期に引き続き受注が堅調に推移したことから、横這いとなった。木材・木製品では、販売量が回復しつつあり改善した。その結果、製造業全体では12ポイント改善の4となった。
 非製造業では、観光で大型イベント開催による効果が剥落し、需要が伸び悩んだことから大幅に悪化した。建設では公共工事が減少したものの、民間工事等に動きがみられ改善した。卸売・小売では、経費削減の効果が表れ、回復した。その結果、非製造業全体としては11ポイント上昇の2となった。
 なお、地域別(全産業)では、県南で5ポイント低下の▲8と悪化したものの、県北で39ポイント上昇の12、県央でも9ポイント上昇の5となり、プラスに転じた。

30/上(30年4月~9月)見通し
 平成30年度上期(以下、「30/上」)の全般的な業績BSIは、全産業では29/下に比べ4ポイント低下の▲1と、やや悪化する見通し。
 産業別にみると、製造業では、電子部品で引き続き安定した受注が見込まれるほか、機械金属でも受注増加が見込まれる。一方、衣服縫製では、受注が不透明なほか、人手不足による人件費上昇が懸念される。木材・木製品でも原材料コスト上昇により収益悪化が見込まれ、全体では前期比横這いの4となる見通し。
 非製造業では、観光で外国人観光客数の増加等から回復が見込まれるものの、卸売・小売で個人消費の回復が不透明なことから、全体では、8ポイント低下の▲6と、悪化する見通し。
 なお、地域別(全産業)では、県南で大幅に改善しプラスに転じるものの、県北、県央では落ち込む見通しとなっている。

(2)売上高BSI
29/下実績見込
 29/下の売上高BSI(前年同期比「増加」割合-「減少」割合)は、全産業で0と、29/上から横這いとなった。

30/上見通し
 30/上の売上高BSIは、全産業で29/下に比べて4ポイント低下の▲4と悪化の見通し。

(3)経常利益BSI
29/下実績見込
 29/下の経常利益BSI(前年同期比「増加」割合-「減少」割合)は、全産業で29/上に比べて1ポイント上昇の▲10とやや改善した。

30/上見通し 
 30/上の経常利益BSIは、全産業で29/下に比べ3ポイント上昇の▲7と改善する見通し。

(4)在庫水準BSI
29/下実績見込
 29/下の在庫水準BSI(「過剰」割合-「不足」割合)は、全産業(建設・運輸・観光・サービスを除く)で29/上に比べて1ポイント上昇の7と、過剰感が続いている。

30/上見通し
 30/上の在庫水準BSIは、全産業で29/下に比べて7ポイント低下の0と、過剰感が緩和する見通し。

(5)資金繰りBSI
29/下実績見込
 29/下の資金繰りBSI(前期比「好転」割合-「悪化」割合)は、全産業で29/上に比べて2ポイント低下の0と、やや悪化した。

30/上見通し
 30/上の資金繰りBSIは、全産業で29/下に比べて1ポイント上昇の1と改善する見通し。

(6)雇用BSI
29/下実績見込
 29/下の雇用BSI(「過剰」割合-「不足」割合)は、全産業で29/上に比べて11ポイント低下の▲50と、不足感が強まった。

30/上見通し
 30/上の雇用BSIは、全産業で29/下に比べて6ポイント上昇の▲44と、不足感がやや緩和する見通し。

2 設備投資の動向

 回答企業256社における平成30年度の設備投資計画額は前年度実績比0.8%増の272億6,600万円となっている。産業別にみると、製造業は同0.7%減の169億9,200万円、非製造業は同3.5%増の102億7,400万円となる見通し。
 設備投資の主な目的(3つまでの複数回答)をみると、「既存設備の維持・更新」(82.1%)が最も多かった。以下、「合理化・省力化・効率化」(32.4%)、「生産能力の増強」(29.5%)と続いた。
 設備投資の主な対象(3つまでの複数回答)をみると、「生産機械・工作機械」(48.6%)が最も多く、「車両」(28.3%)、「事務機器・情報通信関連機器」(19.1%)が上位を占めた。

3 経営上の問題点について

 併せて、最近の経営上の問題点について質問した(2つまでの複数回答)。
 全産業で回答が最も多かったものは、「労働力不足(量の不足)」(27.7%)であった。時系列でみると、「販売量(受注量)の減少」が常態的に大きな問題とされてきたが、「人材不足」の割合が高まっている。「人材不足(質の不足)」と「労働力不足(量の不足)」の2つの回答を合わせると52.7%となり、また、「人材不足(質の不足)」よりも「労働力不足(量の不足)」の割合が高くなり、各企業とも量的な労働力の確保が大きな課題となっていることがうかがえる。
 産業別にみると、製造業では「原材料・仕入価格の高止まり・上昇」(26.5%)、非製造業では「労働力不足(量の不足)」(33.6%)が最も多かった。

4 新卒採用の有無について

(1)平成29年4月入社の新卒採用について
 平成29年4月入社の新卒採用について、「採用があった」と回答した企業の割合は、全産業で54.3%(139社)となった。製造業では52.2%(59社)、非製造業では55.9%(80社)となった。産業別にみると、新卒採用をした企業割合が最も高かったのは「機械金属」の84.0%、次いで「観光」(71.4%)となり、「サービス」(63.3%)、「電子部品」(62.5%)、「運輸」(61.1%)でも6割以上となった。
 次に採用予定人数の確保について、「確保できた」が全産業で56.8%(79社)であった。製造業では62.7%(37社)、非製造業では52.5%(42社)となった。

(2)平成30年4月入社の新卒採用について
 平成30年4月入社の新卒採用については、「新卒採用がある」と回答した企業の割合は53.1%(136社)、一方、「新卒採用はない」は45.7%(117社)であった。なお、29年、30年と2年連続で採用した企業は45.7%(117社)であった。
産業別にみると、新卒採用をした企業割合が最も高かったのは「観光」(71.4%)、次いで「電子部品」(68.8%)となった。また「機械金属」(68.0%)、「サービス」(60.0%)でも6割以上となった。
 前年と比較した新卒採用者数の増減についてみると、「変わらない」と回答した企業が最も多く35.7%(56社)となり、「増加」は29.9%(47社)、一方「減少」は33.1%(52社)であった。
 新卒採用者数増加の理由については、「退職者増加への対応」(42.6%)が最も多くなった。一方、減少の理由については「その他」(53.8%)が最多となり、「応募者の減少」や「採用したいが応募がない」などの回答が多く挙げられた。次いで「採用基準に見合う学生の減少」(28.8%)と、採用意向があるにも関わらず、「質的不足」により、採用数が減少したことが分かった。

5 賃上げについて

(1)平成29年度の賃上げについて
 平成29年度に賃上げ(定期昇給やベースアップなど)を実施した企業割合は、全産業で78.5%(製造業78.8%、非製造業78.3%)となった。「実施していない」と回答した企業割合は、全産業で19.5%(製造業19.5%、非製造業19.6%)となった。産業別にみると、賃上げを実施した企業割合が最も高かったのは、「機械金属」の92.0%、次いで「建設」(86.1%)、「運輸」および「サービス」(83.3%)となり、すべての業種で、29年度に賃上げを実施した企業が半数を超えた。実施時期別にみると、「29年度上期」に実施した企業割合は68.0%、「29年度下期」は10.5%となった。
  
(2)30年度以降の賃上げについて
 平成30年度以降の賃上げ(定期昇給やベースアップなど)実施予定について、「実施予定」と回答した企業は、全産業で71.5%(製造業77.0%、非製造業67.1%)であった。一方、「実施予定はない」と回答した企業は全産業で18.4%(製造業15.0%、非製造業21.0%)であった。産業別にみると、賃上げ実施予定の企業割合が最も高かったのは、「機械金属」の92.0%で、次いで「電子部品」(87.5%)、「その他製造」(83.3%)であった。
 賃上げ実施予定時期についてみると、「30年度上期」が全産業で87.4%(製造業86.2%、非製造業88.5%)、「30年度下期」が全産業で10.4%(製造業11.5%、非製造業9.4%)となった。
 なお、29年度に賃上げを実施し、30年度以降も賃上げ実施を予定している企業は166社(64.8%)となり、全体の6割超が2年連続での賃上げ実施を予定している。
(打矢 亘)
あきた経済

刊行物

お問い合わせ先
〒010-8655
 秋田市山王3丁目2番1号
 秋田銀行本店内
 TEL:018-863-5561
 FAX:018-863-5580
 MAIL:info@akitakeizai.or.jp