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県内企業の「働き方改革」への対応について

 政府は、誰もが活躍できる「一億総活躍社会」の実現を目指し、その最大のチャレンジとして「働き方改革」を位置付けている。少子高齢化等を背景として、労働力の主力となる生産年齢人口が減少し、国全体の生産力低下・国力低下も危惧されるなか、新たな労働力創出に向けての取組みとして、非正規雇用の待遇改善、長時間労働の是正、労働生産性の向上等を目指すものである。
 本県経済においても、人口減少や少子高齢化にともなう労働人口の減少は、大きな影響を及ぼすものであり、実際に人材不足に悩む企業も増えつつある。
 当研究所では、本年9月、県内323事業所を対象に「働き方改革」についてのアンケート調査を行った。本稿では、アンケート結果をもとに、県内事業所の対応状況や対応内容等についてまとめた。

1 「働き方改革」について

 「働き方改革」とは、誰もが活躍できる「一億総活躍社会」の実現を目指し、その最大のチャレンジとして政府が進めている取組みである。
 現在、日本では少子高齢化等を背景に、労働力の主力となる生産年齢人口(15歳以上64歳未満)が総人口を上回るペースで減少しており、将来的な国全体の生産力低下、国力低下が危惧されている。新たな働き手の創出には、これまで労働市場に参加していなかった女性、若者、高齢者等の登用が必要不可欠となるが、活躍を促すためには、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差、長時間かつ硬直的な労働時間を解消するとともに、労働生産性の向上や人材育成が求められる。
 平成28年8月には、労使団体のトップを交えた「働き方改革実現会議」が設置され、具体策を検討してきたが、その成果として29年3月に「働き方改革実行計画」をまとめている。
こうした流れに基づき、厚生労働省や中小企業庁など各省庁においても、同一労働同一賃金、時間外労働の上限規制等に関する法整備、労働生産性の向上に向けた支援や人材育成・活用力の強化等への取組みを進めており、改革に向けた動きは本格化している。

2 アンケート結果から

 当研究所では、「働き方改革」について、本年9月に、県内323事業所を対象にアンケート調査を行い、263社より回答をいただいた(回答率81.4%)。

(1)「働き方改革」への対応について 
 「働き方改革」への対応状況については、「取組んでいる」が31.2%、また、「今後取組む予定である」は16.3%となり、合わせると、半数近くの事業所において何らかの取組みを行っている(予定している)ことがわかった。他に「検討中」と回答した事業所は20.5%ある一方、「現時点では具体的な取組みの予定はない」と回答した企業も30.0%に上っている。
 対応の状況について業種別にみると、「取組んでいる」、「今後取組む予定である」の回答の合計では、「観光」が71.4%と最も高くなったほか、「その他製造」(57.6%)、「運輸」(55.6%)、「電子部品」(52.2%)、「サービス」(51.7%)で5割を超えており、他の業種に比べて対応が進んでいることが窺える。

(2)対応内容について
 (1)で「取組んでいる」、「今後取組む予定である」と回答した125事業所を対象に、具体的な施策としてどのようなことを実施(予定)しているかについて聞いたところ、「長時間労働の是正」が60.0%と最も多くなった。次いで、「労働生産性の向上」(52.8%)、「休暇の取得促進」(46.4%)となった。また、「高齢者の登用・活用」(43.2%)、「女性・若者が活躍しやすい環境整備」(30.4%)の実施事業所割合も高くなった。

(3)「働き方改革」を進めるうえでの課題
 「働き方改革」を進める(検討する)うえでの課題については、「従業員の理解・意識・行動」が48.7%と最も高く、次いで「業務量に対する適正要員の確保」(44.1%)、「経営者や管理職の理解・意識・行動」(31.6%)となった。

3 国や自治体に期待する施策など

 「働き方改革」について、国や自治体に期待する施策や意見を自由回答で聞いた。
 回答のあった38社からは、「改革を進めるためには、人員不足を解消する必要があり、労働力確保に向けた施策を期待する」、「画一的な基準では対応しきれない企業もある。地域性や業種、企業規模を考慮した柔軟な施策が望ましい」、「何から取組んだらよいかわからず、他社の取組み事例などを具体的に知りたい」などの意見が出された。

4 まとめ

 今回の調査結果によると、すでに具体的な取組みを行い、成果を上げている企業も見られた一方で、従業員の働き方に対する意識改革には時間を要すること、短期的には企業・従業員ともに負担増加も懸念されること、また、業種によっては、取引先の理解を得ることに対する不安もあることから、取組みに対して慎重な意見も多く出されている。
 「働き方改革」を実現させるために、その取組みにより企業活動そのものが停滞するような負荷が掛かってしまっては本末転倒であり、各企業の実情に合わせた実効性の高いものにしていく必要がある。
 少子高齢化の進展が著しく、人手不足が叫ばれる本県にとって、「働き方改革」は避けて通れない重要課題とも言える。ある企業からは「労働環境の整備、生産性向上の取組みを企業の発展に繋げていきたい」といった意見も出されていた。
 「働き方改革」の実現に向けては、様々な課題も待ち受けるが、単に小手先の施策で終わることなく、各企業と国・自治体が一体となり、生産性の向上による企業活動の活性化、さらには賃金の上昇、消費拡大といった相乗効果がもたらされることを期待したい。
(打矢 亘)
あきた経済

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